輪島のアカシジミ

                「アカハネムシ 22号(Mar 1997)」                            天野 勝広  輪島市でアカシジミの記録があったのは、時国健太郎氏の昭和47年8月 (とっくりばちNO.22,23号)町野地区での報告が最初で、その後の 記録は私の知る限りでは無いと思われる。  私が、輪島地区で最初に確認採集したのが、昭和59年7月1日に市街の すぐ近くにある林道で、家からは車で10分もかからない美谷林道であった。 この日は蝶採集が目的ではなかったのでネットは持っていなかった。林道を 走っていると道路脇の小枝にオレンジ色のあまり見慣れない蝶がとまってい た。独特の波模様があったので採集しなければと思いあわてて家に引き返し てネットを持ってきた。その間約20分位だと思うが蝶はそのままの位置に とまっていた。採集は簡単にできて、ネットの中で確認したが間違いなくア カシジミであった。その後、近辺を何度となく探してみたがそれ以降飛んで いる蝶でさえ確認できなかった。  2度目のアカシジミとの出会いは、昭和60年6月21日に門前地区の切 り割りの山道で、輪島市との境界近くである。時間は午後の5時頃で天候は 曇りで風が少しあった。山道を車で走っていると、その前を一頭の蝶がひら ひらと谷の方に飛んでいった。飛びかたと色からしてあまり見慣れなかった ので、すぐに車を止めてまわりを確認すると、数頭が山の上の方で飛んでい て時折下の谷の方に降りてきていた。なかなか近くには来なかったが1頭だ け採集できた。  3日後の6月24日に輪島で一番高い山、高州山に夕刻登った。山頂まで 約2km程の道のりで、ほとんどの梢の上に5,6頭の蝶が飛びまわってい るのが確認できた。全体の数でいえば100頭は越えていると思われた。夕 刻で梢がかなり高いため、下から見ると色としては黒っぽくしか見えず正確 には確認できなかったが、大きさの大小があったので、種類としてはアカシ ジミ、ルリシジミ、トラフシジミ、ミドリシジミの類と思われた。時折、特 に黒っぽくて大きめのものも確認できたが、大部分はアカシジミと思われる。 1時間ほど高州山にいたが採集はできなかった。  2日後の6月26日、同じ時間帯に再び高州山に登った。確認できる数と しては半減かそれ以下になっていた。このときも梢が高すぎるのと、まった く下には降りてこなかったので採集はできなかった。同じ年の7月3日、三 井地区の大規模農道沿いの梢の上で、これもかなり多数の蝶が夕刻飛び回っ ているのを確認している。おそらくこの年は、能登地区でアカシジミがかな り多く発生していたのではないかと思われる。  その後、あまり時間がなくて蝶と関わりを持てなかったが、輪島高校の日 吉先生から話があり、もう一度輪島地区の蝶を確認してみようということで、 平成8年に採集をおこなった。  平成8年6月15日輪島の三井地区で、アカシジミを4頭確認そのうち1 頭を採集した。このときは、1頭で直線的に飛んでいる状態の確認がほとん どで、数も少なかった。それでも1頭が、採集可能な近くの梢に止まったの で採集できた。三井地区での確認は初めてである。  6月25日の夕刻、高州山に登ったとき梢の上で4頭のアカシジミを確認 できたが、採集はできなかった。他に少し大きめの黒っぽい蝶も1頭確認し たが、種まではわからなかった。  6月30日の夕刻、高州山の山頂に近い地点で、道路脇の樫の木の葉の上 に止まっているアカシジミを、1頭だけ確認採集できた。  7月2日の午後高州山に登った時、確認できたのは、色はかなり鮮やかな 飛んでいる1頭で、他に1頭を採集できた。採集した蝶は、隣粉がほとんど 無く、翅もかなり痛んだ個体であった。  平成8年(1996)に、三井地区と高州山で採集確認できたので、輪島市に は、アカシジミがかなり広範囲に生息していると思われる。          


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